【活動報告】タイと日本の大学生の協同活動『タイの大学生と一緒にドラマを作ろう!』2022年度
―ドラマ作りを通して、国、文化、言葉、すべての違いを越えたコミュニケーションを体験するー
タマサート大学教養学部日本語講座専任講師 山本由美子
(2023年度本プロジェクトも行います!詳細についてはここから確認してください)
タイの大学で日本語を教えながら、学生が日本語を自分の言葉として発するためには教室でテキストを使った授業だけを行うのではなく、教室や教師、学生という枠組みを超えた活動が必要ではないかと考え、さまざまな活動を行ってきました。活動の中で、毎年何らかの形で行ってきたのは日本語でドラマを作って発表することでした。タイに来る前、日本でも日本語教育に演劇的アプローチを取り入れることに興味を持ち、行っていた[1]私は、コロナ禍で可能になったオンラインで世界とつながれるということに着目し、オンラインで日本の大学生とドラマが作れるのではないかと思いました。
そして、2021年、知り合いを通してMUGAIの張さんと出会いました。私たちの趣旨に賛同した彼女は、さっそく日本の大学生への広報を担当することを引き受けてくれ、ポスターを作成し、いろいろな大学や演劇関係者にPR活動を行ってくれました。そのかいあって、3つの大学の学生が参加し、今年の1月から4月まで、グループでドラマを作り、発表することができました。
最初、日本の大学生と日本語でドラマを作ることに、学生も不安そうでしたが、オンラインでのミーティングを重ねるうちに親しく話すようになり、互いの趣味や好きな音楽、アニメの話で盛り上がっていたようです。ドラマ作りの上では、日本語母語話者と日本語学習者という立場をいい意味で区別し、役割分担という形で進めていました。最後の発表では、日本の大学生もオンラインで参加し、みんなで各グループの作品を見ました。奇想天外なストーリーや編集のおもしろさに大笑いさせられると同時に心が一つになっていることを実感しました。
発表後の学生のアンケートでは、「日本人と友達と一緒にビデオを作っていい経験になった」という感想が多く見られ、日本の大学生のほうは「タイの学生と実際に話しながら一つの作品を作っていけるという機会はなかなかないのでとても貴重な経験となった」「現地参加したいと思った」「タイの学生たちがどれほど日本文化を愛しているかが伝わってきた」など、日本の参加者にとっても意義を感じてもらえたことがわかりました。
ただ話すだけの交流もいいと思うのですが、ある時間をかけて一緒に何かを作っていくという活動のほうが関係性は築かれるし、強まると思います。ドラマのストーリーの中では、母語話者や非母語話者、日本人、タイ人という枠組みは取り払われ、ストーリーの中の登場人物になります。私は、そこに「自分の言葉として実感をもって」言葉を発することが可能になるように思います。
今後、このような活動がさらに発展していき、ドラマを作ることを通して人と人とがわかり合い、つながれる活動として広がり、世界各地で行われることを願っています。
最後になりましたが、MUGAIの代表、張さんのご協力に心から感謝します。芸術を愛し、芸術の人に与える力を信じる張さんと今後もご一緒に活動できることを楽しみにしています。
[1] ー実践者の想いを綴った『もりぼん にほんごわせだの森の実り』ー 第3部「わせだの森」からタイに渡った「わたしの作りたい教室」 山本由美子(ゆみ)